はじめに
オリンパスのハンドヘルド(携帯型)蛍光X線(XRF)分析計は金鉱山に関連して発生する様々なサンプルの元素分析を迅速に行い、高品位のデータをリアルタイムで提供します。対象となるサンプルには金(Au)のピンのような金属サンプル以外にもミルフィードや沈殿物、その他の環境試料が含まれます。
ハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAはラボの研究者がスクリーニングツールとして使用することもありますが、場合によっては試金法の代替として使用することも可能です。XRF検出器技術と信号処理法の発展によって精度と検出限界が向上し、測定可能な元素の数が増えたばかりではなく、分析のために必要な試験回数が大幅に減少しました。
このような分析計を積極的に活用することにより、金鉱山の現地ラボへの投資を短期間で回収することができます。
ハンドヘルドXRFの利点:
- 分析所要時間の短縮: 数時間から数分へ
- 大幅な経費削減: ラボでの作業時間短縮と試薬消費量の削減
- 工場でのAu冶金回収率向上:ハンドヘルドXRFを使用してシリカの貯鉱/供給を日常的に分析することにより回収率が向上
- 労働安全、産業衛生、環境性能の向上
投資の回収
オリンパスのハンドヘルド蛍光X線分析計DELTAは、これまで主としてスクリーニング用のツールとして使用されてきましたが、現在では金鉱山実験室での金(Au)や銀(Ag)の試金法の代替としても使用されることがあります。線形回帰法や、その他の手法を用いた比較研究(上図参照)によれば、AuとAg含有量を調べる目的で精錬ピンを対象として実施した試金法と、XRFによる分析結果が非常に良好な一致を示すことが実証されています。試金法と比較すると、XRFの利用は経費の削減(簡単な試料準備、短い分析時間)、労働コストの削減をもたらし、さらに試薬を消費しません。ある鉱山の例によれば、従来からの試金法では試料準備と分析に2時間を要していましたが、ハンドヘルドXRFならば2分間で済むことが実証されています。XRFによる試験で必要なのは、ピンを回転(平坦化)させながら、異なる位置で短い試験(ケースによって10秒程度)を行い、その平均値を計算するだけです。
実験室の安全性と産業衛生、環境性能の改善
1. 実験室の安全性
- 試金法は試料準備のために濃硝酸と塩酸を必要としますが、ハンドヘルドXRFはこのような試薬を使用しません
- 試金法はその処理の過程で炉と灰吹皿を使用するため、技師が皮膚の火傷や鉛蒸気吸引の危険に曝される恐れがあります。ハンドヘルドXRFならばこのような危険はありません
- ハンドヘルドXRFでは炉の使用頻度が下がりますから熱疲労を起こしにくく、また、炉の開閉/投入等の作業に伴う肉体疲労が削減されます
2. 産業衛生
- 鉛酸化物(試金法の過程で使用します)への暴露減少: 暴露は技師の血中鉛濃度レベルに影響します
- 鉱山と実験室雰囲気中のSiO2粉塵レベルをリアルタイムモニタリング可能:離れた場所にある実験室からの結果を待つ必要がありません(多くの場合、分析結果が返ってくるまでに2週間程度かかります)
3. 環境性能
- ハンドヘルドXRFは環境試料(SiO2粉塵、土壌汚染など)をリアルタイムで分析できるので、離れた場所にある実験室を頼る必要がありません
- 試金法の実行に付随して発生する危険廃棄物が大幅に減少します
ミルフィード、沈殿物、金塊ペナルティ元素
- シリカを対象とした分析ではハンドヘルドXRFとICPが優れた相関を示します
- 貯鉱中の石英含量は破砕効率に影響を及ぼしてAu回収率の低下につながります。XRFを使用して貯鉱サンプル中のシリカを毎日分析することにより、冶金技術者は両者の相関情報を得ることができます
- 精錬沈殿物中のCu、Bi、Se、Pb、Fe、SiO2の分析にXRFを使用できます
- ピンサンプルにXRFデータを適用することにより、延べ棒中のペナルティ元素を決定して、沈殿物の浮沈を調節することができます